社会性の人類学的探究 トランスカルチャー状況と寛容/不寛容の機序

佐久間 寛

佐久間 寛

助教,博士(学術)
東京外国語大学
アジア・アフリカ言語文化研究所
〒183-8534 東京都府中市朝日町 3-11-1
Email: sakumayutaka[at]aa.tufs.ac.jp
個人ウェブサイト:
研究テーマ:人類学,アフリカ地域研究


西アフリカの国家と社会,人と土地の関係について研究しています。
もともとは,アフリカ諸国の貿易構造に関心があり,経済学的手法で研究をおこなっていました。やがて統計数値ではとらえきれない生活世界にも関心をもつようになり,博士課程への進学を機に,人類学へと専攻を移しました。
2004~07年にかけてニジェール共和国西部で実地調査をおこないました。調査時にはほとんど理解されていなかったことですが,そこは,住民から無補償で土地を接収するかたちで国有の灌漑農地の整備が進められた地域であり,また,この出来事が社会的想像力を介して住民に受容された結果,新たな土地制度が生成した地域でした。
この制度生成の途上で,住民を二分する係争を経験し,ふたつの行政単位に分裂した村がありました。わたしの住みこみ調査村でした。調査終了から最近まで,この村の分裂を主題とする民族誌を執筆していました。


最近取り組んでいること:
「経済的なもの」への関心と「社会的なもの」への関心をつなぎ直す方途をさぐっています。たとえば,なぜニジェールで農地整備がすすんだか。それは1970年代にウラン採掘が本格化し,その結果もたらされた資本が農村部に環流したからですが,こうした国家史の末端に調査村の分裂がある一方,同国産ウランの消費地のひとつでは近年最悪の原発事故が起きている。これらの出来事をめぐる社会の様態をとらえるため,社会学者であると同時に社会主義者でもあったマルセル・モースの思想にあらためて注目しています。