谷口 晴香
研究機関研究員
東京外国語大学
アジア・アフリカ言語文化研究所
〒183-8534 東京都府中市朝日町 3-11-1
Email: taniguchi8[at]aa.tufs.ac.jp
個人ウェブサイト:http://www.aa.tufs.ac.jp/ja/staff/list3/taniguchih
研究テーマ:霊長類,伴食関係,種内変異,社会化の過程,社会性の進化
霊長類の離乳期のアカンボウの伴食関係に生息環境が与える影響について研究しています
私はこれまでニホンザル (以下,サル)の地域間比較を通し,生息環境がアカンボウの伴食関係に与える影響に関して研究をしてきました。アカンボウ期は,群れの他のサルたちとの関係が形成される重要な時期であり,特に離乳期は共に食べること (伴食)を通じて母親以外の群れのサルとの関係が形成されます。身体能力が未熟なアカンボウは,母親と比較し処理の容易な,手に入りやすい位置にある食物に食べる時間を長く費やす傾向にあります。そのため,離乳期のアカンボウにとって母親は伴食相手として適していない場面があり,その際にアカンボウは群れの他のサルたちと伴食することがあります。これまでの研究から食物の物理的性質 (食物のかたさ・大きさ・操作の有無・高さ)は,気温や食物条件などの他の生息環境の要因と相まって,アカンボウの伴食関係に影響を与えることが示唆されました。これらが将来の大人となってからの社会関係に影響を及ぼすかもしれません。今後の課題です。
新しい研究への意欲:
今後は,ニホンザルの社会構造の種内変異を検討することにより「社会構造のちがいが社会化の過程に影響を与えるか?」を採食場面に焦点をあて明らかにしたいです。霊長類において社会構造のちがいが社会化の過程 (例: 順位の形成過程)に影響を及ぼすことが種間比較により示唆されています。社会構造と社会化過程の関係を検討することは,他個体への社会的態度 (例:寛容さの度合い)がいかにその集団内において再生産されるかを考える上で重要です。最終的には,ヒトの社会性の進化について考えていきたいです。
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